緊急連絡先がいない~おひとりさまが備える方法
高齢者の方が突然困るのが「緊急連絡先」の提示を求められたとき。昨今ですと、高齢者の方だけでなく、40代以上の方の中にも提示を求められて困った経験をお持ちの人もいらっしゃるはず。
今回は、これから増えてくると思われる「緊急連絡先がいない」ので困ったときに、どのような方法があるのかをお話していきます。
目次
1: 不意に直面する「緊急連絡先」
普段の生活では必要がない緊急連絡先。しかし、ある日突然、必要になることがあります。
例えば、こんなケース。必ずしも高齢者の方だけではありません。
ひとりっ子で50代独身で自営業。親御さんのどちらかが、遠く離れた実家で亡くなられた場合。
ご両親の内、どちらかが健康であれば、緊急連絡先にすることができます。しかし、遺族となられた親御さんが認知症になってしまっていると、緊急連絡先にはできないケースが出てきます。
こういったケースで、アクティブな活動を伴う趣味に参加しようとすると、万が一のために「緊急連絡先」の提示を求められます。
でも、緊急連絡先にできるところがありません。大変困る瞬間です。
もし、何かの病気で入院や手術が必要になってしまった場合、同じケースですと緊急連絡先を記入できないので困ってしまいます。
緊急連絡先というと、「高齢者の方が突然具合が悪くなったときに連絡するところ」というイメージが強いですが、実はそれだけではありません。若年層の方でも身寄りがないという方は困ってしまうことなのです。
2: 緊急連絡先がいないと困ること
緊急連絡先がいないと困ることを少し詳しく見ていきましょう。高齢者の方だけの問題ではないことがわかります。
特に50代を過ぎていると、早くにご両親を亡くされている方もいらっしゃいます。そうした方の中で、
- ひとりっ子
- 兄弟はいるが疎遠になっている
- 親戚とは疎遠になっている
- 頼めるような知人はいない
このようなケースでは、緊急連絡先がいないので困るシーンが増えてきます。
(1)賃貸
部屋を借りるとき、賃貸契約では緊急連絡先を求められます。
例えば、家族が亡くなられたタイミングで、これまでの家とは別のところへ引っ越したいという場合、意外に困ることになります。
賃貸住宅への入居では、緊急連絡先は必須事項。例えば、本人様がご不在時に水漏れが発生した場合、何とかして連絡を取らないといけません。こういったときのために、緊急連絡先の提示が必要になっています。
(2)施設への入居
高齢者の方で施設へ入居しようと考えておられる場合にも、緊急連絡先が必要になります。
この場合の緊急連絡先は、身元保証人も兼ねているケースが多いですので、賃貸住宅の入居と同じように必須と考えてください。
また、施設内で体調の急変があった場合、医療機関へ連携されますが、このとき医療機関へスムーズに緊急連絡先を伝えるためにも、施設側で知っておきたいという理由があります。
賃貸への入居も施設への入居も同じように、住まいを移転する場合は緊急連絡先が必須になります。
(3)入院・手術
ケガや病気で入院が必要になった場合。検査すると手術が必要になってしまった場合。どちらも緊急連絡先(施設への入居と同じで身元保証人を兼ねています)が求められます。
このケースでの緊急連絡先になった人は、入院や手術をされる本人に代わって、治療の判断をする必要が出てくる可能性を含んでいます。
そして、入院や手術の費用の支払いに関しても、本人に代わって支払いする必要が出てくる可能性まで含んでいます。
さらに、ここはあまり説明されないことですが、入院中の方の身の回りのことを任せられることも多々あります。見舞いはもちろん、洗濯なども引き受けなくてはいけないケースがあります。
医療機関の対応としては、緊急連絡先(身元保証人)が明確でないと、入院や手術を断られてしまうこともあります。なかなか難しい問題です。
(4)趣味の活動
先ほど出てきましたように、アクティブな活動を伴う趣味をする場合、年齢に関係なく緊急連絡先を求められます。
例えば、
- サーフィンの体験
- スキーの体験
- スキューバダイビングの体験
カラダを動かすことに関する趣味では、多くの場合に緊急連絡先を記入することになります。
また、スポーツ以外ですとツアー旅行に参加する場合も求められます。旅行中に万が一のことや急病などが起こった場合の連絡先になります。
緊急連絡先というと、40代~60代くらいの方ですと自分には関係ないと思いがちですが、俗に言われる「おひとりさま」の場合は困ってしまうこともあります。
死亡時や施設への入居、入院・手術とは違うタイミングでも必要なのです。
(5)死後の手続き
これは誰もが想像できることです。
死後の手続きを進めるためには、緊急連絡先が必要になります。この場合の緊急連絡先も身元保証人に近い存在です。
3: 緊急連絡先を確保できないか考える
困ったことが起こる前に、緊急連絡先を確保できないか考えてみてください。
(1)親戚や知人
昔から言われているのが、親戚や知人へお願いするパターンです。知人の中には、ご近所の仲の良い人も含まれます。
この場合に注意しておきたいのは、親戚や知人の方で緊急連絡先になっても良いと言ってくださるのは大変ありがたいのですが、この方が高齢であった場合や持病をお持ちであった場合、ある程度の責任と出費を伴いますので、なかなか依頼するのは難しいと言わざるを得ません。
自分よりも年が若い。健康な方。そして信頼できる人。もし、あなたのまわりにいらっしゃれば大変幸せな状態だと思います。
(2)後見制度
後見制度には大きく分けて2つあります。
[1]法定後見制度
ご自身の判断力に問題が生じた場合に利用する制度です。
[2]任意後見制度
判断能力に関係なく、準備できる後見制度です。元気なうちから調べ、必要があれば利用しておくと安心です。
これらの後見制度を利用すると、後見制度で任命された人が緊急連絡先になります。
- 医療契約
- 入院契約
- 退院手続き
- 施設入所契約
- 財産管理
- 死後の手続き
こうしたことを任せることができます。
(3)団体
緊急連絡先と言いながらも実際には身元保証人を必要としているケースでは、身元保証会社を利用することになります。
昔からある保証会社もあれば、NPO法人が運営している団体もあります。
それぞれサービス内容が違いますし、利用料金も違っています。十分に検討し、ご自身の生活プランに合ったところを選んでください。
4: 緊急連絡先がいない場合の備えとは
緊急連絡先がいない場合の備えを優先順位別に見ていきます。
1番:後見制度の利用が安心
2番:団体の利用も二番目に安心
3番:親戚や知人はこれまでの関係性を考えましょう
費用は必要ですが、後見制度の利用が安心です。相手もプロなので滞りなく進めていただけます。
二番目は団体の利用です。こちらも費用が必要ですが、NPO法人などに相談すれば、比較的費用負担が少なくて済みます。
最後に親戚や知人へお願いすることです。この場合、これまでの関係性を考えて依頼しましょう。あまり付き合いが無かったのに、突然言われても相手も困ります。
また、親戚や知人へお願いする場合、やはり緊急連絡先になると身元引き受け人としての責任も発生しますので、時間や費用の負担が発生してしまうことを正直に伝えておきましょう。
特に、入院や手術では一時的にせよ支払いの代行をしてもらわないといけないシーンも出てきます。
5: まとめ
緊急連絡先がいない場合、意外に困ることがあります。これは高齢者の方だけではありません。
40代~60代の方も、高齢者の方も、元気なうちに後見制度を利用するのか、団体などを利用するのか、親戚や知人に依頼するのか一度考えておかれることをおすすめします。
暮らし方が変化している時代です。これから緊急連絡先の提示を求められるシーンが増えるかもしれません。マイナンバーカードで、こうしたことが必要なくなれば、それはそれで便利なのですが、まだまだわかりません。
この機会に一度考えてみてください。