介護施設で亡くなられたときの対応と注意点
介護施設で暮らしておられるご家族をお持ちの方。介護施設にお勤めの方。
多くの場合、高齢者とのお別れは突然やってくるものです。昨日まで楽しくお話していたのに。先週訪問したときは元気だったのに。
このようなケースが多いため、亡くなられると残された方々がパニック状態になってしまい、亡くなられた後の対応が思うようにできないことがあります。
その結果、最後のお別れのタイミングである葬儀が、納得の行かない葬儀になってしまったり、終わってから「こうしておけば良かったのかも?」と後悔してしまったり。
誰しも後悔を全て無くすことはできませんが、できるだけ少なく、残された方々が「いいお別れができた」と感じられるようになっていただきたいと思います。
そこで今回は、介護施設で亡くなられたときの対応と注意点について、これまでの経験からお話させていただきます。
目次
1: 介護施設で亡くなられたときの対応
介護施設の中で亡くなられたときですが、概ね次のような対応になります。
施設によっては若干違っていることもあります。
(1)連絡が来ます
ご家族が付き添って看取られる場合、危篤やご臨終の連絡はありません。ご家族が遠方にお住まいだったり、お仕事などで付き添えなかったりされた場合は、施設の担当者から緊急連絡先として伝えている番号へ電話があります。
ここで注意していただきたいのは、施設で働いておられる方も、ご家族の方も、どちらも「緊急連絡先」が正しく共有できていることです。
間違った電話番号や、つながらない電話番号だと、連絡ができませんのでお互いに慌てることになります。
(2)臨終、死亡宣告がなされます
医師による死亡宣告がなされます。
- 心肺拍動、呼吸の停止の確認
- 脳機能の停止の確認
- 死亡時刻の確認
- 医師から家族への死亡宣告
ここでのポイントは、死亡宣告は医師が行うということです。
(3)医師から説明
死亡宣告の後、医師からご家族へ、死亡された経過が説明されます。
また、医師から亡くなられた方への処置対応が必要かどうか、ご家族へ尋ねられます。
(4)ご家族の時間
医師の説明後、ご家族での時間をお持ちいただけます。
大切な時間ですから、ご家族の方も処置を遅らせてほしい場合は、遠慮なく伝えてください。
遠慮して、無理にご家族の時間を短縮する必要はありません。気持ちが落ち着くまで、ゆっくりと過ごしてください。
2: 亡くなられた後にすること
次のような対応を行われる施設がほとんどです。
(1)エンゼルケア
亡くなられる前(生前)の面影を、できるだけ取り戻すために、メイクを行ったり、着衣を整えたりされます。
一般的には、ご家族との時間を過ごされた後に、施設の担当者からご家族へ声をかけていただけることがほとんどです。
施設によってエンゼルケアの内容は違っています(ルールはありません)。一般的には次の対応をされるところが多いです。
- 口腔ケア
- 眼内ケア
- 開口対応
- 全身清拭
- 爪切り
- 手浴
- 足浴
- 整髪
- メイク
看護師さんが行われることが多いですが、施設によっては女性職員さんがエンゼルケアをされる場合もあります。
(2)死亡診断書の発行
医師から死亡診断書を発行し、ご家族へお渡しします。
死亡診断書の発行に関してですが、施設が手配を行うため、ご遺族自身が医師へ連絡して手配する必要はありません。
万が一、お手元に死亡診断書が届かない(渡されない)場合は、施設の担当者へ連絡し、医師へ確認してもらってください。
あと、これは必ずご注意いただきたいことですが、医師から渡された死亡診断書は、今後の手続きなどで必要になってきます。無くさないよう、大切に保管しておいてください。
こうしたタイミングでは、受け取った死亡診断書を近くに居た親族の誰かに保管をお願いすることもあると思います。保管をお願いするのは構いませんが、必ず「誰に」お願いしたのか。その人に言えば、すぐに出てくることを確認しておきましょう。
このタイミングでは、多くの人が出入りします。頼んだはずなのに、誰かがどこかに置いたままにしていた。他の書類関係に紛れ込ませてしまっていた。
こうしたことが起こると、かなりパニックになります。保管を誰かにお願いするときは、注意しておきましょう。
(3)ご遺体の搬送と安置
ご遺体の搬送と安置が行われます。
ここで知っておいていただきたいのは、ご遺体の搬送と安置を行った葬儀社で、必ず葬儀を行わなければいけない、ということはありません。
「搬送と安置」と「葬儀」は、別のことなのです。
施設側から「できるだけ早く搬送してほしい」と、お願いされた場合ですが、葬儀社が決まっていないと施設から紹介されるところが対応してくださいます。
しかし、搬送と安置されているタイミングで、予算や葬儀の方法などの関係で、別の葬儀会社を探されることもあると思います。
もし、あなたが安心できる別の葬儀会社が見つかった場合、葬儀をあなたが安心できるところへ依頼することは、搬送と安置を対応してくださった葬儀社に対して全く失礼なことではありません。
あなたが安心できる。納得できる。そうした葬儀会社を選ぶことができます。
(4)親族への連絡
親族へ連絡してください。
(5)葬儀会社を決める
この段階で葬儀会社を決めることができます。理由は先ほどのことです。
「搬送と安置」を対応してくださった葬儀社とは別の葬儀会社へ「葬儀」を依頼しても問題ありません。
(6)葬儀の日程や内容を打ち合わせ
具体的な葬儀の日程や、葬儀の内容(プランなど)を決めていきます。
ここは葬儀社の流れに任せて頂くのがスムーズです。
あなたが(ご親族が)決めるのは
- お通夜をされるかどうか
- ご葬儀をされるかどうか
- 葬儀をされる場合は、どの方法(家族葬なのか、もう少し大きな葬儀なのか)を選ばれるのか
まずは、この3つを決めてください。そうすると、後は葬儀社の担当がご提案しますので、ご自身が納得いく方法を打ち合わせするだけです。
(7)ご葬儀
ご葬儀当日は、葬儀社の担当が滞りなく進むよう、配慮を持って対応します。
ご葬儀の直前に「○○してあげたい」「○○してみたい」という要望がありましたら、葬儀社の担当へ相談してください。すべてのご要望を短時間で叶えることはできないかもしれませんが、可能な限り対応できるよう手配します。
3: 前もってご家族と相談してもらうことも大切
万が一のことを考えて、前もってご家族と「葬儀」について相談いただくことも大切です。
(1)もしもの時のために家族で相談
ある程度は家族も覚悟が出来ていたとしても、いざ「臨終」という状態になると、やはり誰でも慌てます。何をどうすればいいのかわからなくなります。
これは、当然のことです。普通のことです。
だからこそ、もしもの時のために、家族で「葬儀はどうするのか」を相談いだきたいと思います。
当然、臨終の連絡を受けてから、家族で相談した内容が変わってしまう可能性もあります。しかし、家族の中で共通した「葬儀のあり方」がわかっていれば、内容を変えようとしても、まとまりやすくなります。
(2)葬儀会社へ前もって相談すると安心
できれば、前もって葬儀会社へ相談されることをおすすめします。
その方が、ご家族全員安心です。いざというとき、何をどうすればいいのか分からなくなっても、とにかく事前に決めた葬儀会社へ連絡さえすれば問題は解決します。
葬儀会社へ相談される場合ですが、次のポイントに注意してください。
- 自分たちがイメージしている葬儀の方法を得意としているかどうか
例えば、小さく家族葬にしたいと思っているのに、大手葬儀会社へ相談すると、大きな祭壇の葬儀を提案されてしまう可能性があります。
- 担当者が代わらないかどうか
「言った、言ってない」というトラブル。葬儀では絶対に持ち込みたくないことです。そのため、あなたの葬儀の担当者が、途中で代わらないところがおすすめです。担当者が代わらないのなら、要らぬトラブルも発生しません。
- 話しやすいかどうか
これは好みの問題でもあります。あなたが安心して話せるかどうか。パッと見たときの印象は?人と成りは?葬儀は終わってからも、いろいろと仏事に関することで悩むシーンが出てきます。こうしたときも、気軽に相談できるところが安心です。
5: まとめ
介護施設で亡くなられたときの対応と注意点をお話しました。
今回のお話の中で、特に覚えておいていただきたいのは「搬送と安置」を対応した葬儀社で、必ず「葬儀」をしなくてはいけない、という理由はないことです。
搬送と安置は、介護施設でも病院でも「できるだけ早く」と言われることが増えています。そのため、じっくりと自分たちに合った葬儀会社を選んでいる時間がなかったと後悔される方もいらっしゃいます。
でも、ご安心ください。搬送と安置されている間の時間で、葬儀会社を探して選ぶ、施設から紹介されたところと相談して選ぶ。こうしたことが可能ですし、失礼なことではありません。
大切な方との最後の時間です。できるだけ後悔が少なくなる葬儀を検討してください。